【2024】Blender(ブレンダー)でできること・できないことは?
3DCG用のソフトウェアは、さまざまな会社から幅広いラインナップのものが提供されています。たとえば、アニメーション制作では欠かせないMayaや、プロダクトデザインに特化したFusion360などが挙げられます。
これらのソフトは、年間費用がかかり高額のため、個人で使用する難易度は高いです。個人でも簡単に3DCG制作を行いたいと考える方にもってこいなのが、Blenderです。ところが、3DCGをまったくやったことない人にとっては、操作感が難しいと感じるのではないでしょうか。
そもそも、自分の求めているニーズを満たせるソフトなのかを判断できず、学習すべきか迷っている方もいらっしゃるかもしれません。今回は、Blender(ブレンダー)でできること、できないことを紹介し、Blenderならではのメリット、デメリットについても紹介します。Blenderを学習し、3DCG制作を行いたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
Blender(ブレンダー)とは
画像引用元:Blender.org
まずは、Blender(ブレンダー)の概要を解説します。
Blenderは、オープンソースの3Dコンピューターグラフィックスソフトウェアです。3Dモデリング、アニメーション、映像制作、VFXなど、幅広い用途に使用することができる機能を搭載していながら、完全無料で提供されています。
Blenderが完全無料で提供されている理由は、出資によって成り立っているサービスだからです。アニメーション制作会社や、グラフィックデザイン会社など、Blenderを使用してビジネスをしている有志からの募金で成り立っています。
また、Blenderを使用しているアーティストが独自のプラグイン・アドオンを提供し、日々使いやすくなっていることも、Blenderの特徴となっています。
Blenderでできること
それでは、ブレンダーを使用してできることについて解説します。Blenderを使用すると、次のようなことが可能になります。
- モデリング
- マテリアル設定
- リギング
- 映像制作
- シミュレーション
- VFX
モデリング
Blenderでは、さまざまなオブジェクトやキャラクターを制作することができます。立体的な形状や細かいディテールを表現することが可能です。
ブレンダーには、大きく分けて2つのモデリング方法があります。図形からモデルを制作していく「モデリング」と、粘土のような球体を直接ブラシで調整していく「スカルプト」と呼ばれる操作が設けられています。
2つの操作を組み合わせることで、プロダクトデザインのような工業的なモデルを制作することもできますし、動物や自然のような有機的なモデルを制作することも可能です。
マテリアル設定
Blenderでは、オブジェクトにリアルな質感や色を与えることができます。さまざまなマテリアル設定を使用して、オブジェクトをカスタマイズすることが可能です。
たとえば、立方体の表面に目の絵柄を貼り付け、サイコロを制作するといった設定ができます。
リギング
リギングは、骨格や制御点を設定し、動作をつけられる機能です。リギングによって、キャラクターの動きを自然に表現することができるため、アニメーションで使用されます。
アニメーション専用3Dソフト「Maya」ほど滑らかな動作をつけることは難しいですが、クリエイターの技術によっては、それに匹敵する動作をつけることも可能です。
映像制作
Blenderでは、カメラや照明を配置して、映像を撮影することができます。プロモーションビデオを3DCGで制作するといった場合に、Blenderが役立ちます。
シミュレーション
Blenderでは、物理的な挙動をシミュレートすることができます。液体の流れや布の振る舞いなど、リアルなシミュレーションを行うことができます。
そのため、物理演算で地震が起こった際のシミュレーションを行ったり、雨が降った場合に光がどのように反射するかといった建築デザインのシミュレーションを行うこともできます。
VFX
Blenderを使用すると、ビジュアルエフェクト(VFX)を制作することができます。爆発、煙、火、粒子効果など、迫力のあるエフェクトを作り出すことが可能です。
アフターエフェクトなどのソフトでも同様の効果を生み出すことができますが、より立体的な素材を必要とする場合にはBlenderを活用すると良いでしょう。
Blender(ブレンダー)でできることの具体例
ここまで、Blender(ブレンダー)でできることを紹介してきました。まだあまりイメージが湧かない方に向けて、Blenderでできることの具体例をより詳しく解説します。
フルCGの映像制作
Blenderを使用すると、リアルなCG映像を制作することができます。光や影、質感などの細かな表現をコントロールし、迫力ある映像を作り出すことができます。
たとえば、劇場版シン・エヴァンゲリオン劇場版の戦闘シーンではモデリングでBlenderが用いられており、レンダリングまでもBlenderで行っているようです。
こちらの記事では、複数の企業で協力して映像制作を行う場合、同じソフトウェアを使用することが条件となりますが、Blenderを活用することで社会の協力を仰げるようになったと語っています。
イメージボード制作
Blenderを使用して、アイデアやイメージを視覚化するイメージボードを制作することができます。3Dモデルやテクスチャを組み合わせることで、プロジェクトのビジョンを明確に伝えることができます。
こちらの記事では、「雨を告げる漂流団地」という映画制作において、イメージボード制作に3DCGを活用している事例が掲載されています。監督の石田が制作したラフイメージボードをもとに、3DCGでラフモデルを起こし、そこから完成カットを制作するという手法が記載されています。
3Dプリントの原型制作
Blenderを使用して、3Dプリント用の原型を制作することができます。モデリングツールを使用して、細部までこだわったデザインを作り出し、高品質な3Dプリントを実現することができます。
従来、プロダクトデザインとして3Dモデルを制作する場合、原型は木材などを使用することが一般的でした。ところが、Blenderを使用すれば、スカルプトモードで原型を制作できるため、より有機的な形状にも対応できます。
近年、Blenderを使用してフィギュアの原型を作り、レジンキャストなどの技法を使用して販売している方も増えてきています。
Blender(ブレンダー)ではできないこと
続いて、Blender(ブレンダー)ではできないことについて解説します。
VRコンテンツの制作
Blenderでは、VRコンテンツの制作ができません。これは、Blenderに変換機能が搭載されていないためです。
ただし、Blenderで制作したモデルをゲーム開発エンジンに持っていくことで、使用することは可能です。たとえば、製作したモデルをUnityやUnreal Engineなどのゲーム開発エンジンで活用すれば、没入感のあるVRコンテンツを制作することができます。
トラブル解決
通常、ソフトウェアで問題が生じた場合には、販売側からのサポートを受けられます。公式のドキュメンテーションやオンラインのコミュニティを参照して、問題の解決策を見つけることができるはずです。
しかし、Blenderは、オープンソースのソフトウェアであるため、そういったサポートを提供していません。ただし、世界中のユーザーが助け合いながら技術開発を行っているため、自分の直面した問題をGoogleで検索するとほとんどの場合、解決策が見つかります。
3DCGでBlender(ブレンダー)を活用するメリット
ここまで、Blender(ブレンダー)でできること・できないことについて解説しました。次に、Blenderを活用するメリットについて解説します。
無料で利用できる
前述したように、Blenderは完全無料で利用することができます。そのため、予算に制約のある個人や小規模なプロジェクトにおいては非常に役立つでしょう。
もちろん、無料だからといって他のソフトウェアと比較して劣っているわけではありません。むしろ、業界の最先端をいっているのがBlenderです。
日本語に完全対応している
Blenderは日本語に完全に対応しており、日本語を母国語とするユーザーにとっても非常に使いやすいです。ただし、Blenderで不具合が発生した際に問題を解決するトラブルシューティングについては、海外のサイトの方が多いため、可能な限り英語のUIに慣れておくようにしましょう。
基本的な3D操作は網羅している
Blenderは基本的な3D操作を網羅しています。これにより、初心者から上級者まで幅広いレベルのユーザーが利用することができます。
多くの方がアドオンを販売している
Blenderのユーザーコミュニティでは、多くの方がさまざまなアドオンを販売しています。アドオンにより、さらなる機能追加や拡張が可能です。
具体的には、自動的に画面の状況に合わせて床面を制作するアドオンや、画面の輝度を自動調整してくれるアドオンなどがあります。
3DCGでBlender(ブレンダー)を活用するデメリット
無料でありながら、非常に魅力的なメリットを持つBlender(ブレンダー)ですが、一方で、Blenderを活用する際にはデメリットを理解しておく必要があります。ここでは、2つのデメリットを解説します。
ある程度パソコンのスペックが必要
Blenderは高度な3DCG制作ソフトウェアであり、それを快適に利用するには一定のパソコンのスペックが必要です。特に、処理能力やグラフィックスカードの性能が重要です。
Blenderの公式サイトに必要なスペックが具体的に記載されており、そちらを参考にしてください。
- OS:64bit
- CPU:4コア以上
- メモリ:16GB RAM
- ディスプレイ:1920×1080
- デバイス:3ボタンマウスまたはペン+タブレット
- グラフィックカード:4GBのRAMを搭載したグラフィックカード
なお、最低スペック、最高スペックも公式サイトで共有されているため、あらかじめ確認することをおすすめします。
あまり仕事には向いていない
Blenderはあくまで3DCG制作を趣味や個人のプロジェクトとして楽しむためのツールであり、プロの仕事には向いていないという認識が一般的です。プロの3DCGアーティストやアニメーターは、より専門化されたMayaなどを使用しています。
とはいえ、前述したようにシン・エヴァンゲリオンにBlenderが使われているように、昨今ではBlenderを積極的に活用しようという動きが見られるようになってきました。そのため、今後Blenderが仕事になる可能性は秘めているのではないかと考えることもできます。
いずれにせよ、Blenderは他の3DCGソフトと似たような操作感となっているため、ソフトに慣れる意味でも最初に触っておいた方がよいでしょう。
レンダリング時間を短縮するならRender Poolの活用がおすすめ
Blenderで高品質な3Dモデルを制作した後、直面するのが「レンダリングに時間がかかる」という問題です。
クリエイティブを素早く公開したいのに、100時間超のレンダリングが必要となり、タイミングを伸ばしてしまう方もいらっしゃるかもしれません。また、パソコンのスペックによっては、途中でクラッシュしてしまうこともあり、レンダリングが進まないことに悩みを抱えてしまう方もいます。
レンダリング時間を短縮し、クリエイティブを素早く公開したい場合には、「Render Pool」の活用がおすすめです。
Render Poolは、複数のマシンをネットワーク上で連携させてレンダリングを分散処理する仕組みです。こちらを活用することにより、レンダリングにかかる時間を大幅に短縮することが可能となります。
事実、78時間のレンダリングを3時間に低減した事例もあります。まずは無料のデモクレジットを活用し、レンダリングを実施してみてください。
まとめ
Blender(レンダリング)はオープンソースの3Dコンピューターグラフィックスソフトウェアであり、幅広い用途に使用できます。モデリング、マテリアル設定、リギング、映像制作、シミュレーション、VFXなど、さまざまな機能を備えており、クリエイティブなイメージを具現化できるでしょう。
今回紹介した内容を参考に、まずはBlenderのインストールから進めてみてください。