【2024】Blenderでクラウドレンダリングする方法は?対応したクラウドレンダリングファーム
Blender(ブレンダー)は、無料かつオープンソースの3D作成ソフトウェアです。
Blenderは無料とは思えないほど多彩な機能を備えており、3Dモデリングやアニメーション、シミュレーション、動画編集、レンダリングなど3D作成における一般的な機能のすべてをサポートしています。
中でもレンダリングは、3D作品の「仕上げ」部分ですので、3D作品の中核を担う機能です。
また、近年ではインターネットの発展により、クラウド方式によるレンダリング「クラウドレンダリング」が登場しつつあります。
今回は、Blenderのレンダリングおよびクラウドレンダリングについて解説します。
Blenderのレンダリング
クラウドレンダリングについて解説する前に、Blenderのレンダリング機能について理解しましょう。
Blenderのレンダリングエンジン
Blenderのレンダリングエンジンは、無料ソフトとは思えないほど優秀です。
次の3種類があります。
Eevee
Eeveeは、Blender標準搭載のレンダリングエンジンです。
非常に高速なレンダリングが特徴で、リアルタイムレンダリングを得意としています。
また、EeveeはBlenderの起動時に規定のレンダリングエンジンになっています。
Eeveeは高性能ではないパソコンでも高速でレンダリングができるため、細かい試行錯誤もスピーディに行えます。
Cycles
CyclesはEeveeと同じくBlender標準搭載レンダラーの1つです。
モンテカルロ法を用いたパストレーシング(Path Tracing)というレンダリングを用いており、フォトリアルな画像が出力できます。
Cyclesは非常に性能が良く、Eeveeとは異なるアルゴリズムを用いており、EeveeよりもCyclesでのレンダリングの方が高品質な作品に仕上がります。
一方、CyclesはEeveeより計算能力を必要とし、計算時間が長くかかります。
Cyclesには高度な計算能力が求められるため、GPUレンダリングに対応していることも特徴です。
AMD Radeon™ ProRender
AMD Radeon™ProRenderはAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)社が提供するレンダリングエンジンです。
外部プラグインのためBlender標準搭載ではありませんが、無償でダウンロードおよびインストール可能です。
Blenderのレンダリングエンジンとしては最高品質の機能を備えており、非常に精巧な3D映像をスピーディにレンダリングできます。
また、Cyclesと同様にGPUレンダリングにも対応しているため、クラウドレンダリングでも使用可能です。
なお、Blenderには「Workbench」というレンダリングエンジンもありますが、あくまでも3D編集における作業画面を表示するためのものであり、最終的な出力画像をレンダリングするために使うことはほとんどありません。
レンダリングが必要な理由
Blenderに限らず、レンダリングは3D制作に必要な行程です。
では、そもそもレンダリングが必要な理由は何なのでしょうか?
理由は複数挙げることができますので、異なる観点から考えてみましょう。
3D作品をより魅力的にするため
3Dソフトで作ったモデルやテクスチャ、ライティングやカメラ位置は、あくまで素材にすぎません。
3Dモデルを魅力的な作品へと昇華させるためには、さまざまな味付けが必要です。
レンダリングはライティングやエフェクト、物理シミュレーションなどを用いて、3Dに味付けを行い作品の魅力を上昇させてくれます。
画像や動画などのメディアファイルへの変換するため
3DCGのレンダリング前のデータはサイズが非常に大きいです。
そして、レンダリングも非常に膨大な計算を必要とします。
映画並のCGのリアルタイムにレンダリングのは、数百万の高性能マシンでも不可能に近い所業です。
レンダリングは、時間をかけて3Dデータを画像や動画などのメディアファイルに変換します。
この作業により、非常に高品質な3DCGが一般的なパソコンやスマホでも再生できるようになります。
クラウドレンダリングとは
クラウドレンダリングは、クラウドコンピューティングをレンダリングに応用した手法です。
クラウドレンダーファームは、インターネットを介して多くのCPU/GPUに接続したコンピュータの集合体であり、映画やテレビ番組、およびゲームの制作でコンピューターグラフィックスをレンダリングするために構築されています。
クラウドレンダリングは「インターネットを通して外部の計算資源に接続してレンダリングのお手伝いをしてもらう」といったサービス全般を指します。
クラウドレンダリングが必要になる場面
クラウドレンダリングが必要になる場面は、「作品をより良くするため」とシンプルに考えるのが良いかもしれません。
非常に高度なエフェクトを利用した複雑なアニメーションを行うと、3Dレンダリングの計算コストが膨大になるため、その計算コストの軽減のためにクラウドレンダリングは用いられます。
マシンパワーが低いと高度なレンダリングに数時間~数日かかるなんてことも珍しくありませんが、時間をかけて得られたレンダリング結果が満足のいかないものだった場合は、やり直さなければなりません。
クラウドレンダリングは、外部のコンピュータを用いて高速なレンダリングを行うことができるため、そういった「時間と計算コスト」に関する悩みを解決するために使用できます。
スピーディなレンダリングと再調整は、高品質な3D作品の作成に欠かせず、クラウドレンダリングが大きな力となってくれます。
クラウドレンダリングのメリット
次に、クラウドレンダリングによって得られるメリットを紹介していきます。
高速なレンダリングができる
3Dモデルのレンダリングには非常に高度で複雑な計算が必要であり、1台のマシンで膨大な時間と膨大な負荷がかかります。
クラウドレンダリングは、レンダリング時にデータを分割し、複数のCPU/GPUに割り当て、はるかに短い時間でのレンダリングが可能になります。
それぞれのCPU/GPUは作業を分割して並行して実行する機能を備えているため、単一のマシンよりもはるかに高速にレンダリングが可能になります。
レンダリング中でも別の作業ができる
クラウドレンダリングはインターネット経由で接続された別のマシンを使用するレンダリング方法であるため、レンダリング中に自分のマシンの計算に干渉することはありません。
したがって、「レンダリング中にマシンに触れることができない」という問題もありません。
場所を選ばずにレンダリングができる
レンダリングはクラウドで行われるため、いつでもどこでもレンダリング結果を表示できます。
また、インターネット上で実行するため、結果を他人と共有できるというメリットもあります。
Blenderとクラウドレンダリングの相性
Blenderは世界的にも有名な3D編集ソフトウェアであるため、対応しているクラウドレンダリングファームも多いです。
クラウドレンダリングは、プロ向けの「Maya」や「Houdini」などを前提としていることが多いですが、これらに対応していてBlenderに対応していないサービスはほぼありません。
ただし、GPUベースのレンダーファームはCyclesやAMD Radeon™ ProRenderなどのGPUレンダリング対応のエンジンしか使用できない点には注意しましょう。
また、コスト面についてもBlenderユーザーとクラウドレンダリングは相性が良いです。
Blenderは無料ソフトウェアですので、3Dの入門として触れている人も多く、使用しているパソコンがそれほど高性能でない場合もあるもしれません。
そんな方々がBlenderのレンダリングのためだけに数十万単位のパソコンを導入するのは気が引けますし、かかるコストも大きいです。
クラウドレンダリングファームは、手軽なコストで高度なレンダリングができるため、Blenderユーザーのボリューム層である3D初心者~中級者の方々に相性の良いといえるえしょう。
Blenderに対応したクラウドレンダリングファーム
次に、Blenderに対応しているクラウドレンダリングファームを紹介していきます。
RebusFarm
RebusFarmは、ドイツのケルンで運営されているクラウドレンダリングファームです。
Blenderをはじめとしたさまざまなソフトに対応しており、CPU/GPUレンダリングが可能です。
プロ向けのレンダーファームで、初期費用は約560ドルと比較的高価ですが、学生割引などで最大50%の割引が受けられます。
Fox Renderfarm
Fox Renderfarmは、アメリカで運営されているクラウドレンダリングファームです。
MayaやCADで有名なオートデスク社や世界の名だたる3D関連企業と提携している企業向けレンダリングファームですが、Blenderも使用できます。
マニュアルが掲載されているサポートページが英語で書かれており、とっつきづらさはありますが、日本事務局が存在しているため、日本語のサポートも期待できます。
25ドルの無料クレジットが得られるため、費用をかけずにクラウドレンダリングを始めてみることができます。
GridMarkets
GridMarketsは、アメリカに本社を置くクラウドレンダリングファームです。
GridMarketsの公式サイトが日本語対応でないため、日本での知名度はそれほどありませんが、アカデミー賞にノミネートされたSF映画「パッセンジャー」で利用されたことから、業界内でも注目度が高まっています。
GridMarketsはCPUレンダリングがメインで、3DCGソフトウェア「Houdini」での使用を強く推していますが、Blenderでも使用可能です。
1ドルから使用を始められる手軽さも魅力的ですので、英語に抵抗がなくコストを抑えたい方におすすめです。
GarageFarm.NET
GarageFarm.NETは、イギリスに本社を置く企業が運営しているクラウドレンダリングファームです。
上記の3つのサービスが企業やプロ集団向けだったのと比較すると、GarageFarm.NETはフリーランスのクリエイターの利用を想定しており、安価で簡便なクラウドレンダリングを提供しています。
Blenderにも対応しており、1時間あたり約1ドル~3ドルで利用可能です。
ライブチャットやスカイプなどで24時間サポートを行っていますが、英語のみの対応なため注意が必要です。
Render Pool
Render Poolは、当社モルゲンロットが運営するクラウドレンダーファームです。
Render PoolはGPUベースのクラウドレンダーファームで、数千台のGPUにより高速なレンダリングが可能です。
日本で運営されているクラウドレンダーファームは世界的にも珍しく、GPUサーバーの大半が日本に所在しています。
Blenderとの相性も良く、AMD Radeon™ProRenderやCyclesでのGPUレンダリングが可能です。
他のレンダーファームと比べて、日本語サポートが充実しているのはもちろん、コストが日本円で計算できる点も強みです。
また、コストは「1分あたり約3円」で、海外のレンダリングファームと比較しても安価に抑えたレンダリングが可能です。
プリペイドシステムであるため予算オーバーの心配もなく、操作も簡単なため、日本人の3Dクリエイターであればぜひ頭に入れておきたいクラウドレンダリングファームです。
Render PoolでBlenderのクラウドレンダリングをする方法
最後に、Render Pool(レンダープール)でBlenderのクラウドレンダリングをする方法について紹介します。
なお、ここではレンダリングエンジンとして「AMD Radeon™ProRender」の使用を前提としています。
Pro Renderをインストールする
AMD Radeon™ProRendernのホームページから、Blender用プラグインをダウンロードし、インストーラを起動します。
表示された案内に従って進めてゆき、「install」をクリックすると自動でインストールが開始します。
また、AMD Radeon™ProRendernの使用には「RPR Material Library」のインストールも必要ですので注意しましょう。
Pro Renderを有効化する
Blenderを起動し、プロパティエディターでRender タブに切り替えます。
レンダーエンジンのリストがあるので、Radeon ProRenderを選択し、有効化します。
プロジェクトファイルを作成する
エクスポートの際に「Radeon ProRender」を選択し、レンダリングファイルを書き出します。
またこの際に「RPR形式」で保存されていることを注意してください。
Render Pool にプロジェクトファイルをアップロードする
Render Poolにログインし、左メニューの「アップロード」をクリックして、先ほど作成したプロジェクトファイルをアップロードします。
操作は非常に簡単で、ワンクリックでアップロード可能です。
レンダリングを実行する
プロジェクトファイルのアップロード後、レンダリングを開始します。
実行中のファイルは、「アクティブレンダリング」項目で管理されます。
レンダリングの実行中は、いつでも進捗状況を確認できます。実行中のレンダリングを開始、一時停止、キャンセルすることができます。
レンダリング結果をダウンロードする
レンダリング結果が得られたら、ファイルをダウンロードし、レンダリングは完了です。
なお、レンダリング途中でもフレーム単位でダウンロードが可能です。
まとめ
Blender(ブレンダー)は気軽に利用できるソフトウェアですが、非常に優秀な機能を有しています。
また、Blenderはクラウドレンダリングとの組み合わせによって、プロにも匹敵する3D作品を迅速かつ美しく仕上げることができます。
高性能なマシンがなくても、Blenderとクラウドレンダリングの組み合わせがあれば、プロにも負けない高品質な3D作品が生まれるかもしれません。